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11/6&7 Economist和訳

ハンドルから手を放せ
Hands off the wheel

自動運転車に自動車運転を教えるのが難しい
The hard job of teaching autonomous cars to drive

こんな時にコンピューターゲームが役に立つ

クララ=マリナ・マルティネス博士は自動車を運転中、気が付いた異常をどんな些細な事でも全てノートにメモする。彼女はそれを機械学習アルゴリズム(ある種のAI)に入力する。彼女はこうして、ドイツのスポーツカーメーカー、Porsche(ポルシェ)の一部門であるポルシェエンジニアリングのためにその機械学習アルゴリズムの開発に協力している。

このアルゴリズムは、車に完全自動運転を任せられるほど信頼性の高いシステムを作り出すことを目的としている。業界では「レベル5」として知られる完全自動運転車は、ドライバーが一切介在せずに全行程を自動運転し、道路上のあらゆる状況に自動で対応できるものだ。ところが、ここまで実現するのは難しく、多くの場面で試みが後退させられている。例えば昨年、配車サービス大手のUber(ウーバー)は、自動運転車を開発する自社部門を売却してしまった。

自動運転車は便利なだけでなく、その安全性も潜在的には高いと宣伝されている。とは言え、人間が自動車の安全運転を学ぶのに時間がかかるのと全く同じで、自動車が安全運転を学ぶにも時間がかかる。米国のシンクタンク「ランド・コーポレーション」の推計によれば、人間の運転手よりも20%安全に自動運転できるシステムを開発するためには、100台の自動運転車を365日24時間、総走行距離で140億kmを走らせる必要があるという。1台が平均的な速度で走行した場合、約400年かかる計算になるという。

そこでポルシェなどの自動車メーカーは、シミュレーターを利用して開発プロセスを加速させている。これらのシミュレーターは、現実にはまず起こらないような危険な状況をソフトウェアに教え込む。このためにマルティネズ博士とそのチームが採用しているのが「ゲームエンジン」と呼ばれる、コンピューターゲームで写実的な画像を生み出すプログラムだ。これを使って、ソフトウェアが走行できる仮想世界を作り出している。

この仮想世界の中のモノには例えば、建物は硬く、人体は柔らかい、という風にその本来の物理的特徴が与えられていて、そのため仮想車両に搭載された、車載カメラ・レーダー・ライダー(光を利用したレーダー)・超音波トランシーバーなど諸種のセンサーが適切に反応できるようになっている。一旦このソフトウェアを学習させた後、今度は現実のテストコースで仮想世界で学んだ状況を再現し、本物の自動運転車でテストされる。

こがどれほど早く実現されるかは、まだ分からない。実現されるためには、規制当局も利用者も、ソフトウェアドライバーが生身の人間ドライバーよりも本当に安全性が高いのかという疑念を乗り越えなければならない。とは言え、ポルシェ側の視点に立って考えると、もうひとつ別に重要な問題が浮かび上がる。そもそもスポーツカーを所有する大きな理由が、オーナーが自分の優れた運転技術を他人に見せびらかして自慢することにあるのを考えると、ソフトウェアが人間の「運転の腕前を自慢する権利」を奪ってしまう完全自動運転車の市場規模は、一体どの程度の大きさ(または小ささ)になるのだろうか?